シンガポールに来てから、ヒンドゥー教寺院を訪れるようになりました。
インド南部から移住してきたインド系住民が多いシンガポールでは、ヒンドゥー教寺院は極彩色で彩られたドラヴィダ様式。ゴープラム(塔門)や寺院の屋根には、インド神話の神様たちの彫像がびっしり並んでいます。これらを見ているうちに、だんだん
誰がどの神様か見分けられるようになってきました。日本にいたときには考えられなかったことだ(@_@)
早い段階で判別できるようになったのは、
破壊と創造の神シヴァ。ヒンドゥー教の三最高神の1人として、名前は日本でも有名ですよね。
外観の特徴は三日月の髪飾りを着けていて(←ココ重要な判別ポイント)、額に第三の目があって、毒蛇のネックレスをつけていて、自らやっつけたトラの皮をはいだ腰巻きをしていることです。
トラじゃなくてヒョウ柄の腰巻きを巻いている像も多いんですけど(笑)。舞踏の神様でもあり、足を上げて踊っているポーズの「ナタラージャ」という像を、あちこちの寺院で見ます。
リトルインディアで特に目立つ寺院は
スリ・ヴィラマカリアマン寺院。
セラングーン・ロードに面した、高いコープラムが印象的です。
この寺院に祀られている主神は、
女神カーリー。殺戮と恐怖の女神様です。物騒なお方ですが、悪魔を滅ぼすほどの絶対的な強さが信仰の対象になっています。この女神様の姿が、とっても怖いんですよー!
女神カーリーのお肌は青色で、これは実際には黒い色を表しています。ヒンドゥー教では黒は不浄の色なので、黒い肌を表すときは青色を使うのです。口角からは牙がはみ出ており、ぺろりと舌を出しています。手には様々な武器を持ち、
生首や髑髏のネックレスを首にかけています。ぎゃー!この寺院では北西の屋根の中央右手に、髑髏のネックレスを着けて生首を持ったカーリー像がおわします。夢に出てきそうなキョーレツなお姿。ぶるぶる…
カーリーは、
戦いの女神ドゥルガーから、残酷さや苛烈さを凝集して生み出された女神です。だからこの寺院のゴープラムのド真ん中など、表だって目立つところには、カーリーじゃなくてライオンにまたがったドゥルガー様が姿を見せています。ドゥルガーは一般ウケしそうな美人の女神様ですからね。なんかズルイですね(笑)。
しかしスリ・ヴィラマカリアマン寺院にはさらに怖い女神像があります。
西南側のお堂の屋根にいる、
女神ペリヤッチです。こ、この像が…
女性のお腹を裂いて内蔵を暴き、男性を踏みつけてる像なのだ!ぎゃー!
これは、とある因縁によりペリヤッチがパンドヤ王国の王を踏みつけ、王妃のお腹を裂いて内臓を食べる、という伝説の一場面を表した像なのですが、あまりにもリアル。つい身震いしちゃいます。ちなみに今年度版の「地○の歩き方」は、この像の写真を載せて「赤い舌を出し、生け贄を求めるカーリー像」と解説していますが、
違いますよーw(123ページ参照)。確かにカーリーとは関わりが深いのですが、ペリヤッチはペリヤッチです。
ところで「地○の歩き方」といえば、他の神様についても間違いが。
スリ・ヴィラマカリアマン寺院を北上したところにある
スリ・スリニヴァサ・ペルマル寺院は、シヴァと並ぶヒンドゥー教の三最高神の1人、
ヴィシュヌを祀る寺院です。ヴィシュヌは世界を維持する力を持つ神で、額にU字のマークがあり、手には法螺貝やチャクラ(円盤みたいなもの)を持っているのが特徴。そしてなんと、とぐろを巻いたヘビの上で寝たりくつろいだりしている像があるのです。ぎゃー!
これは
「この世界はヴィシュヌの夢に過ぎず、ヴィシュヌが目覚めれば一瞬で消えてしまう」ということを表しているんだそうです。なんだか深いですね。そんなわけでスリ・スリニヴァサ・ペルマル寺院には、あちこちにヘビ(正確にはアナンタ蛇王)の上でドヤ顔しているヴィシュヌ様の像があるのですが、「地○の歩き方」のこの寺院の解説には「蛇神の上に座するシヴァ神などの彫刻がある」と書かれています。
違いますよーw(124ページ参照)。インドの神様の世界は、奥が深いのです…。
ヒンドゥー教寺院でゴープラムや彫像をじっと見ていると、しばしば通りすがりのインド系ローカルが話しかけてきて、彫像の神様とインド神話の物語について熱心に説明してくれます。それを聞いているうちに、彫像ウォッチングがだんだん楽しくなってきたのでした。シンガポールの強い日差しの下で、高いゴープラムを長時間見上げるのは、なかなかキツいんですけどね。
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